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アトリエシムラと「民藝を深める」―河井寛次郎との出会い

更新日:8月30日

皆さんは「アトリエシムラ」をご存じでしょうか?


これは染織家・志村ふくみさんのお孫さん、志村昌司さんを中心に展開される染織ブランドです。2024年は「民藝を深める」をテーマにオンラインゼミも開催しています。このゼミは月一回のペースで進行し、それぞれの月に課題本が設定されています。昌司さんの講義を受けた後、課題本についての感想を参加者が共有し合うスタイルで毎回おこなわれています。


6月の課題本は、河井寛次郎の『火の誓い』でした。

この作品をきっかけに、さらに『蝶が飛ぶ葉っぱが飛ぶ』も読み始めました。





河井寛次郎との出会い


「河井寛次郎」という名前を聞いてピンとくる方もいれば、私のように「こんにちは。はじめまして。」という感覚の方もいるかもしれません。


私自身、柳宗悦の名前しか知らなかった一人ですが、河井寛次郎の文章に触れる中で、彼の世界観に心が動かされました。メンターとして弟子入りしたいとまで思わせるほどの魅力を感じたほどです。


河井寛次郎は、あえて現代の言葉で言えば「スピリチュアル」な人物だと思います。

彼は非常に高い視点から物事を見ていて、その言葉一つひとつがとても深く響きます。


「すべてのものは自分の表現」。

この言葉に出会ったとき、彼の本質を少し理解できた気がしたのです。



自分と世界のつながり


河井寛次郎の言葉をさらに掘り下げると、「私」とは世界全体の一部であり、同時に世界そのものも「私」の一部であるという感覚に行きつきます。つまり、自分の外で起こることは、自分自身を投影しているということ。すべてのものが、私自身を映し出す鏡である――そう感じました。


座右の銘としては、「自分は何か」。常に自分自身ととっくんでいます。これは、利己主義という意味ではありません。自己を通じて、しかも自他のない世界に至りたいと願います。

これは河井寛次郎の中に「ワンネス」という発想があったのではないかと考えたくなる一節です。


私もまた、「自分は何か」という問いを長く持ち続けてきた人間でもあります。そして最近なんとなくですが、自分は「個の確立」ではなく「全体への回帰」を求めているのではないか、と思うようになったのです。それは「有」から「無」への回帰、すなわち、すべてを内包する「無」へと帰る道です。この場合、「無」とは決して虚無ということではなく、全てを包み込む豊かさなのだと感じます。



「ギリギリの無分別」とは


さらに、河井寛次郎は「ギリギリの無分別」を説きます。

「ギリギリの無分別で作ったものが、一番あきない」

と、言うのです。


この言葉が示すものは、自分という個性をギリギリまで消し去りながらも、完全には消えずに残る部分――それが「ギリギリの自分」なのではないかと思っています。


人に好かれるかどうかは知りませんが、自分の好きなものを自分で作ってみようというのが、私の仕事です。そういう際に表現されるぎりぎりの自分が、同時に他人のものだというのが自分の信念です。ぎりぎりの我に到達した時に初めて、ぎりぎりの他にも到達します。自他のない世界が、ほんとうの仕事の世界です。

自分が完全になくなってしまったら、何かを作ること、何かを表現することはできません。だって、この世界には、見られる客体と見る主体が必ず存在するからです。


そこで浮かんでくるのは、「魂」や「ハイヤーセルフ」という概念です。


地上に暮らす私以外にもう一人の自分が存在するとしたら、それが「魂」とか「ハイヤーセルフ」と呼ばれるものでしょう。そして、このもう一人の自分こそが、ワンネスの意識に近い存在なのかもしれません。


「ギリギリの自分」とは、決して尖った自己主張ではなく、ふんわりと温かく、光のように軽やかな存在。そんな感覚が、私の中に浮かんできました。



河井寛次郎の作品に込められたメッセージ


「悲しみの中でも、深い部分では喜んでいる自分がいる」。


河井寛次郎の言葉が示すこの感覚は、私たちの魂レベルでの本質を表しているのかもしれません。地上でのあらゆる経験は、最終的には「喜び」へとつながるもの。どんな経験も、魂にとっては成長と喜びに満ちたものであるということです。


河井寛次郎の作品が人々の心を動かす理由は、その技巧の素晴らしさだけでなく、私たちが忘れかけている「自他のない世界」への回帰を思い出させてくれるからではないでしょうか。


彼の作品を通して、彼が知っていた「ワンネス」という魂の故郷を、私たちもまた感じ取ることができるのかもしれません。



※ワンネスに関する考えはあくまでも私個人の感想です。セミナーの内容とは異なります。

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